宇宙で一番☆幸せな政略結婚

「ちょっと待ってろ」

 聖竜は立ちあがって、書斎に向かった。


 しばらくすると、あるとの携帯が鳴った。


 驚いて携帯を見ると、着信表示が「大好きな人」になっていた。

 ずっとかかって来なかったのに、どうして今頃かかってくるのだろう? 

 あるとがそう思っていると、聖竜が戻ってきた。


 手には携帯電話が握られている。


 どうゆう事? と、あるとが驚いていると。

 聖竜は携帯電話を見せた。

 発信中の番号は、あるとの携帯電話の番号だった。


 聖竜が携帯を止めると、あるとの携帯電話も止まった。


「なんで? ・・・今更言うの? ・・・もっと早く、知りたかった・・・」

 泣き出してしまったあるとを、聖竜はそっと抱きしめた。


「ごめん、騙すようなことして。電話なら、素直に話せると思ったんだ。あのお金が消えない限り、俺は素直になれそうもなかったし、お前の中からも蟠りが消えないと思ったから」

「・・・何も覚えていないから・・・。誰なのかも、解らなくて・・・」

「そうだったんだな。あの日の夜、お酒はあまり飲まないって言っていたもんな。それなのに、けっこう飲んでたからな。俺は、そんなに飲んでいなかったし。お酒飲んで、記憶飛んじゃうこともないから覚えていたよ。だから、結婚式の時は泣きそうなくらい嬉しかった。心から愛しているって思った人が、来てくれたから・・・」


 あるとは泣き出してしまい、何も言えなくなった。


「ごめん、そんなに苦しかったんだな。・・・もっと早く、カミングアウトしなくちゃいけなかったよ。本当にごめん。だって俺、結婚式の時。もうお前の事知ってたし」

「はぁ? 」

 あるとは目に涙をいっぱい貯めて、聖竜を見た。


「あ、いや。あの日・・・お前って、慌てて帰ったんだろう? 」

「はい・・・何も覚えていなかったから、びっくりして」


 聖竜はポケットから手帳を取り出して、あるとに渡した。


「これ、落として行ってたから」

 あるとは手帳の中を見た。

 その手帳は、あるとが検察官だった時の手帳だった。

 まだ髪が長くて、ちょっと悲しそうな目をしていた頃のあるとの写真も貼ってある。
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