たったひとこと
「竜!頼む、打ってくれ。竜が打って流れを変えてくれ。」

こちら、竜之介の野球の試合。七回裏攻撃の場面、3対0で負けている。

一年生だが期待の代打、竜之介。

「頑張ります!」

素振りをしてバッターボックスへ…と、観客席に見えるのは陽菜の姿。

「何で…!?」

目が合うと陽菜が手を振る。

竜之介は声を出さずに“サッカーは?”とたずねる。

それを読み取った陽菜は視線を逸らす。

ため息をつき、陽菜に向かって追い払う仕草をした竜之介は、陽菜がしぶしぶ立ち上がるのを見てから、バッターボックスに入った。
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