たったひとこと
「俺は…俺は別に来てほしくなかったんだけど…」

直希が陽菜の横に並んで話し始める。

「行かなかったんだから、いいでしょ?正確には…行けなかっただけど…」

「認めたね!」

「うるさい、もう行かないから安心して。」

陽菜は疲れた表情で言い返す。

「俺じゃなくてさ、先輩達や他の部員がうるさいんだよ!
“今日は幼なじみ来てないのか”とか、“ヤジ女様はまだか”とか。負けてるときなんか“早く呼べ”って言われるんだぞ?」

直希が熱弁する。

「だからなに?」

陽菜は直希が何を言いたいのかわからない。

「だから…つまり…今日は負けたって事。」

直希も自分が何を言いたいのかわからなくなりそうだった。

「そう…」

「そうなんだよ。」

「負けたときは私のせいなわけ?」

「違うよ、そうじゃなくて!」

2人の言い合いは陽菜が家に入ってしまったことで終わりを迎えた。

その結末は喧嘩別れ。

「なんでこうなる…」

1人呟く直希。

最近の2人は喧嘩ばかり。
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