5分以内で読めるショート・ホラー集
5 生前の死因
生前の死因
ぼけぇっと一人、外に出て海を眺めながら、休日を過ごしていた。
空がオレンジ色に滲み出し、そろそろ日も暮れようとしている。
すると、隣に少年が腰掛けた。年の頃は6、7才か。
話したことはないが、顔は知っている。
彼の両親がこの辺りでは、有名なのだ。父は大学教授、母は童話作家として成功し、お金持ちである。
街から離れたこの海沿いに大きな別荘を持ち、休みとなればここに足を運ぶ一家である。
一帯をふらついていれば、通りや公園で彼らを見かけることもある。
確かこの少年は、一家の末っ子だったと思う。
もう何年も前のことだが一度、夫婦には、余った農作物や魚を分けたこともあった。
彼ら一家の別荘は、俺がぼけぇっと過ごすここからも、振り返れば視界に入る。距離はあるが、他の家と比べ頭一個も二個も大きく、目立つのだ。
「ねえ、おじさん」
四十を超えてるが、見た目が若いとよく言われる。少年とはいえ、失礼な第一声である。
「どうした、少年」
顔は見かけたことはあったが名前は知らない。
「少年、なんて変な呼び方しないでよ。リクっていうんだ」
「そうか。どうした、リク 」
「おじさん、よくここにいるよね」
「おう、見てたか」
「見てたっていうか、目につくからさ」
お互い「顔見知り」ではあったらしい。
「でね、聞いてほしいことがあってさ」
「俺でいいのかか」
「うん、親とか先生には話しにくいことだからさ、なんも関係のないおじさんくらいがいいんだ」
「なるほどな。ま、いいや。聞かせろよ」
「あの、変な話なんだけどさ、ぼくはね、一回死んでるんだ」
「は……?」
急に、何を言いだすのだ。
「変に聞こえるかもしれないけどさ。生まれる前の記憶っていうの?
それが最近、バババって頭の中にでてきて。お父さんやお母さんにもちょびっと話したんだけど、不思議そうな、困ったような顔をするだけなんだ」
ぼけぇっと一人、外に出て海を眺めながら、休日を過ごしていた。
空がオレンジ色に滲み出し、そろそろ日も暮れようとしている。
すると、隣に少年が腰掛けた。年の頃は6、7才か。
話したことはないが、顔は知っている。
彼の両親がこの辺りでは、有名なのだ。父は大学教授、母は童話作家として成功し、お金持ちである。
街から離れたこの海沿いに大きな別荘を持ち、休みとなればここに足を運ぶ一家である。
一帯をふらついていれば、通りや公園で彼らを見かけることもある。
確かこの少年は、一家の末っ子だったと思う。
もう何年も前のことだが一度、夫婦には、余った農作物や魚を分けたこともあった。
彼ら一家の別荘は、俺がぼけぇっと過ごすここからも、振り返れば視界に入る。距離はあるが、他の家と比べ頭一個も二個も大きく、目立つのだ。
「ねえ、おじさん」
四十を超えてるが、見た目が若いとよく言われる。少年とはいえ、失礼な第一声である。
「どうした、少年」
顔は見かけたことはあったが名前は知らない。
「少年、なんて変な呼び方しないでよ。リクっていうんだ」
「そうか。どうした、リク 」
「おじさん、よくここにいるよね」
「おう、見てたか」
「見てたっていうか、目につくからさ」
お互い「顔見知り」ではあったらしい。
「でね、聞いてほしいことがあってさ」
「俺でいいのかか」
「うん、親とか先生には話しにくいことだからさ、なんも関係のないおじさんくらいがいいんだ」
「なるほどな。ま、いいや。聞かせろよ」
「あの、変な話なんだけどさ、ぼくはね、一回死んでるんだ」
「は……?」
急に、何を言いだすのだ。
「変に聞こえるかもしれないけどさ。生まれる前の記憶っていうの?
それが最近、バババって頭の中にでてきて。お父さんやお母さんにもちょびっと話したんだけど、不思議そうな、困ったような顔をするだけなんだ」