5分以内で読めるショート・ホラー集
「ちょっと待ってて、飲み物もってくるからさ」

そういって、彼は一階に降りていった。
両親は不在で、今は彼以外の家族は、家にいないようだ。

わたしは、部屋の中を見回した。
お兄ちゃん以外の男の人の部屋は初めてで、なんだかどぎまぎする。
と同時に、色々気になってしまう。

ベッドの下を覗き、手を伸ばした。
伸ばした先には、ロリコン向けの漫画だ。まだ小学生くらいの女の子が、性的に乱暴されるような漫画。

人の部屋を勝手に漁っちゃいけない。
そんなことわかってるけど、わたしの手は止まらなかった。
机の一番下の引き出しの奥には、際どい水着をつけた女の子のdvd。
女の子の年齢は、わたしと同じくらいか。
つまりは、11歳くらいだ。
法に触れてはないようだけど、世の男がこんなの見て楽しんでるのかと想像すると、シンプルに気持ち悪いものだ。

押入れの奥にも手を伸ばす。
その先にもまたdvd……。ジャケットの女の子の年齢はさらに低く「8歳」と堂々と記されている。

これらのアイテムが示すことは、一目瞭然だ。
つまりは、ロリータ・コンプレックス。
いわゆる、ロリコンってやつだ。
そういう趣味があるからって、
実際に手を出すような犯罪者だとは、もちろん限らない。

っていっても、やっぱり、
そんな趣味をもっている男が、11才の女子を部屋に招きこんだってなれば、怪しい。
危険信号、点滅だ。
恐怖だ。

飲み物を手に戻ってきた祐希さんと、目が合う。
押入れの奥に手をかけている最中であった。
気まずい時間が数秒、流れた。
冷や汗がツーっ、と頬をつたう。

「なにしてんの、サオリちゃん」

私はあわててカバンを拾うと、祐希さんに肩をぶつけながらその家を出た。コップがガシャンと割れる音がした。

外に出たわたしは、叫んだ。
きゃああぁ、と大きな声で。
その近所のおじさんおばさんたちが「どうしたんだい」と寄ってくる。

わたしはシクシク泣きながら、訴えた。


「あの家に住んでる人に、襲われたの。抱きついてきて、変なとこ触られて、、、」

< 30 / 45 >

この作品をシェア

pagetop