幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
鈴木さんは先に運転席に乗り込んでエンジンをかけた私を待っていた。

「玉城さんはいつからこの仕事を始めたんですか?」
「始めて二年になります」
「俺よりも年下に見えるのに、ベテランさんですね」

鈴木さんは慣れたハンドルさばきで、公道へと出て行く。

「鈴木さんはおいくつなんですか?」
私はさりげなく彼のコトを知ろうとまずは歳から訊いてみた。

「二十七です。この歳で、アルバイトなんて引きますよね」

二十七歳か・・・
歳よりも若く見えるけど。

「地図は見ていないようですけど、マンションの場所、わかりますか?」

「前職は宅急便のドライバーだったんで、この辺りの地図は頭に入ってます」

前職は宅急便ドライバーか・・・
私の頭の中に次々と鈴木さんの情報がインプットされていく。

「ちなみに玉城さんはお幾つですか?」

「私は四月が来たら、二十三歳になります。今は二十二歳です」

「二十二歳か…若いですね」

彼の屈託のない笑みに心臓がドキッと高鳴り、心拍数を上げる。

鈴木さんの横顔が王子様とまたしても重なった。

一軒目の民泊部屋に到着するまで彼と色々と話した。

「へぇ~玉城さんの前の仕事はカフェの店員だったんですか・・・」

ヘルス嬢をしていたとはさすがに言えなかった。
でも、リーダーの渡瀬さんにはバレているけど。

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