幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
次はゴミ箱を覗き、ゴミを取り出して大きなゴミ袋の中へと入れていった。
「掃除機は最後ですか?玉城さん」

「はい」

「次は何処を掃除していくんですか?」
鈴木さんは私の指示をメモに取り、仕事熱心な人だった。
「次はキッチンルームを掃除します」

「分かりました」

私達は寝室を出て、LDKに入り、対面式のキッチンに立った。

「シンクの掃除を始めます」

「!?玉城さん」

鈴木さんはGパンの後ろポケットを探り、血相を変えた。

「俺、スマホを落としたみたいです。
寝室に戻っていいですか?玉城さん」

「いいですよ。早く戻って来て下さいね」

「はい」

彼は寝室に戻り、落としたスマホを捜しに行ってしまった。

「申し訳ありません」

鈴木さんは五分ぐらいして、キッチンに戻って来た。

「スマホはありました?」

「はい。仕事初日なのに、本当に申し訳ありませんでした・・・」

「キッチン周りは終わったので、次はバスルームの掃除に行きます」

「俺、サボってしまいましたね・・・」
鈴木さんは自嘲的な表情を見せた。

「この部屋は掃除の手順だけ憶えてくれたらいいので、そう自分を責めないでください」

「鈴木さんって優しいですね・・・」
男性にそんな風に言われたのは人生初めてだった。
私は顔を真っ赤にしてしまった。

「玉城さん?顔赤いですけど…熱あるんですか?」


「いえ、大丈夫です。バスルームに行きますよ。鈴木さん」
私は彼に変に思われたと思い、恥ずかしくて先にバスルームに駆けてしまった。

「玉城さん!!?待って下さい!!」

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