幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「此処は『王龍』の根城。好き好んで、此処に来る日本人は居ません」

「俺達は…」

「…私は剣吾さんを上手く誤魔化しますから…逃げてください!」

「それは無理だ。君を置いては逃げられない!!逃げるなら、君も一緒だ。桜華さん」

「逃げるとはどういうつもりですか?槇村先生」

「!!?」

知らぬ間に、賀集さんが戻っていた。

「剣吾さん・・・」

賀集さんは怖い表情で槇村先生を恫喝して、白衣を掴んで強い力でフローリングに突き倒した。

「こちらが下手に出ていれば、いい気になって…警察が公開捜査に踏み切りました。貴方にうろうろとされたら、迷惑なんです!」

「剣吾さん…止めて下さい!」

「お黙りなさい!桜華。私は槇村先生と話しをしているんです!」

賀集さんはホルスターから銃を引き抜き、槇村先生に額に銃口を押し当てた。

「逃げようなんて気を起こせば…私は貴方を殺しますよ…いえ、貴方の大切な奥さんの遥さんを殺しますよ…いいですね…貴方は私の指示に従い、桜華だけを診てください。病院にはもう行かせません…」

「病院の設備を確認したが、桜華さんの出産の為の十分な設備が整っていない。東亜に入院させて…」


「・・・桜華は黒戸なんです。夢街を出れば…何処にも行く場所がありません」

「・・・だからと言って…」

「貴方は腕の良い産科医でしょ?貴方の腕があれば十分・・・貴方は桜華の為に用意した医者。
赤子が無事に産まれたら、お払い箱です」

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