幻想ウエディング～人魚姫には王子様の甘いキスを～

でも、『ホームクリーン』は雇用条件にマイナンバーや住民票の提出を必須としていた。私を採用してくれた渡瀬さんに勇気を出して、自分が｢無戸籍｣である事を話した。

彼の権限で上手に誤魔化してくれた。
彼はその見返りに私との交際を迫った。

私は彼の見返りを承諾した。後で知った。
彼が既婚者だと言うコトを。

私達の関係は不倫。

彼には高校生の息子も居た。

――――鈴木君、若くてイケメンだったから、桜のコトが心配だったんだ・・・何もなかったらいいよ。お疲れさま


「失礼します。リーダー・・・」

私は通話を切り、暫くスマホの画面を見つめ、深い息を吐いた。
今の仕事に就いてられるのは渡瀬さんのおかげ。
でも、私はこの不倫の関係に嫌気が差していた。
「チェック終わりました。玉城さん」

「ありがとう、鈴木さん」

「溜息なんてついて、どうしました？」

「ううん、なんでもない・・・」
仕事をしているだけなのに、鈴木さんと何もなかったコトを残念がる私。
私はどうかしていた・・・

時間は十三時を回っていた。

「お腹空きましたよね。
この近くに私の行きつけの定食屋があります。そこで、ランチしましょう。鈴木さん」

「はい」