幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~

「キレイ・・・」

「こうやって桜を眺めたのは何年振りかな?父さんの田舎は全国的にも桜の名所で有名な場所なんだ・・・」

「へぇー・・・」

「だから、小さい頃は家族で観に行った・・・」

「写真撮りたいな・・・」

「じゃ人の邪魔にならないように寄ろう・・・」

鈴木さんの大きな手が肩に乗り、優しく端へと誘導してくれた。
こうして、男性と外でデートをするのは初めての私の心は浮き立っていた。
渡瀬さんとのデートはもっぱら人目を気にしてラブホ巡り。
もう何年も奥様とはセックスレスだと言って、執拗にHを迫る。
渡瀬さんにとって私は格好の欲望を満たす道具に過ぎない。
他の男性だってヘルス嬢の私を同じように扱った。
でも、鈴木さんは私を女性として優しく扱ってくれる。
その温かな彼の優しさにどんどんと惹かれていった・・・
「ありがとう・・・」

「どういたしまして、じゃ俺も撮ろうかな?」
鈴木さんもiPhoneを手にした。
私は桜、彼は桜をバックにツーショット写真を撮った。

「後で、写真「LINE」で送るよ」

「はい」
夜空を彩るピンク色の桜。二人で春限定の風物詩を堪能した。
楽しい時間は瞬く間に過ぎていく。
私は終電に乗り遅れてしまった。

私は落胆して、改札口の向こうを見つめた。
「タクシーで帰れば?俺、送って行くし」

彼はタクシー乗り場に行こうと困惑している私に投げかけた。
送って貰えば、私が住んでる場所がネットカフェだとバレてしまう。

「それとも、俺の部屋に泊まる?」

「えっ!?」



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