幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「入ります・・・」
私は純粋な好奇心にかられ、部屋の中に初めて足を踏み入れた。
カーテンの閉め切られた暗い部屋。
部屋には彼の姿がなかった。
照明も落とされ、PCモニターの青白い光が不気味に光っていた。
キーボードの上に置かれていた写真の部屋には見覚えがある。
この部屋は麻布の「グレイル」の部屋。
私は写真を手に取り、じっと見つめもう一度確かめた。やっぱりあの部屋だ。疑問に思い、小首を傾げていると彼が戻って来た。
「何してるの?桜」
振り返ると刺すような視線を向けて険しい表情のバスローブ姿の彼が立って居た。
「絶対に入るなと約束しただろ?桜
何故?入った?」
「私は朝食出来たと伝えに・・・」
「写真は返せっ」
彼は写真を取り上げた。
「ゴメンなさい・・・次郎さん」
「今すぐ、部屋から出るんだ!!」
彼は私の言葉に耳を貸さなかった。鋭い眼光を向けた。
私は彼の気圧に慄き、慌てて出て行った。