幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
彼は壊れ物を扱うようにゆっくりとカラダをシーツの上に下ろした。

男性には欲望のはけ口ようにしか思われず、無体に扱われるコトが多かった。

そんな中、彼に出会って、初めて人として扱われ、男性の優しさに触れた気がした。

「今も眩暈するか?桜」

蒼斗さんの黒い瞳が心配そうに私を至近距離で見つめる。

「大丈夫です・・・」

「そう・・・暫く、横になった方がいいよ」

「でも・・・髪の毛が・・・」

私は濡れた髪を気にした。

「待ってて…ドライヤー持ってくるから・・・」

私の額を撫で、部屋を出た。

結婚する気のない彼が提案した偽装結婚。

――――別れる日が必ず訪れる期限付きの結婚生活。

私が無事に出産すればおしまいかもしれない。

こんな風に優しくされたら、ますますスキになってしまう。
< 69 / 161 >

この作品をシェア

pagetop