幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
ツヤのある黒髪をツーブロックのヘアスタイルに整え、色素の薄い切れ長の瞳で私をジッと見ていた。

「神尾さんも元気そうだね」

「おかげさまで」

蓮さんの座るデスクの脇には秘書らしき男性が立ち、片手には書類を持っていた。

「急いで・・・親父の元に持っていってくれ」

「社長は会長室に居たぞ。蓮」

「そっか・・・じゃ会長室に持って行ってくれ。神尾」

「承知しました・・・副社長」

「ほら、適当に座るぞ。桜」

「はい」

私は彼の後を追い、同じ応接ソファに腰を下ろした。

「急いで持っていきますので、暫し、お待ちください。蒼斗様」

「はいはい」

神尾さんが急いで、部屋を出て行った。

「急で驚いたぞ。蒼斗」

私達の前のソファに従弟の蓮さんが腰を下ろす。

「何処で出会ったんだ??蒼斗」

「歌舞伎町だ・・・」

「へぇー・・・歌舞伎町か・・・
何??
キャバ嬢か何かか??」

蓮さんは私を一瞥して、蒼斗さんを好奇な目つきで詰った。

「まぁ、そう言う所だ・・・」

彼はハッキリと言わず、適当にはぐらかした。



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