幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「爺ちゃんには渋い顔されたけど…実は妊娠してんだ・・・」

「えっ?あ・・・そうなの・・・デキ婚かよ」

「まぁな・・・」

「頑なに結婚しないと言っていたけど・・それなら仕方ないな。で、仕事はどうなの?」

「仕事は大変だよ・・・」

「『王龍』絡みでか?」

「当然だ・・・ベイランドの治安も悪くなる一方だし」

「・・・歌舞伎町で繰り広げられているヤクザの抗争を裏で手を引いてるのは『王龍』だと噂があるし」

「『王龍』の存在は今の我が国にとっては脅威だ」

「・・・最初から移民の受け入れには俺も反対だった」

「・・・俺だって」

「政治家も馬鹿ばっかだな」

「目先のコトしか見ていないと言うか・・・
もっと視野を広げ、未来を見つめて考えれば、今の状況に陥るのは目に見えていたはずだ」

「・・・あ、すまない・・・君の名前をまだ訊いてなかったな・・・」

「玉城桜です」

「桜か…いい名前だな…俺は桐生蓮。蒼斗の従弟だ、よろしく」


蓮さんは形の良い唇の口角を上げて、愛想の良い表情を浮かべ、私に自己紹介した。

「こちらこそよろしくお願いします」

「・・・固い挨拶はいいから・・・」

「只今戻りました・・・蒼斗様、今すぐにコーヒーを用意致します」

神尾さんが慌てた様子戻って来た。

「神尾・・・彼女は妊娠中だから、緑茶を淹れてやれ」

「それはおめでとうございます。蒼斗様
では、彼女には緑茶をご用意致します!!」


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