幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「私はこれで失礼します。店長」

「カラダ大切にね・・・今月の給料は来週また取りに来て。たまみちゃん」

「はい」

私は鳴滝さんに軽く頭を下げて、事務室を出て、店の裏口から外に出て、通りへと出た。

昼間の歌舞伎町を一人で歩く。

夜の帳が降りるとネオンに彩られ、キレイな街に変貌するけど、昼間は雑多な雰囲気の街だった。

私は一人の金髪の男性とすれ違う。

黒い細身のスーツに落ち着いた赤色のYシャツの襟を覗かせていた。黒いサングラスで目は隠れていたが、鼻筋は通り、整った顔立ちをしていた。
人目を惹く派手な色合いの服装。
しかし、ヤクザにしては立ち姿が気品に溢れ、不自然だった。
私は立ち止まり、彼の方を振り返った。

彼も私の視線を感じ、足を止めて振り返る。

「・・・貴方は誰ですか?」

冷たく響く声。

「えーと・・・知り合いに似ていたと言いますか・・・」
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