幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「夏目・・・?」
彼は神妙に蒼斗さんの苗字を呟く。
「・・・夏目って・・・夏目蒼斗ですか?」
「そうですけど・・・蒼斗さんの知り合いですか?」
「あ…彼には何かと情報屋として接触がありますから・・・顔見知りなんですよ・・・
そうですか・・・あの夏目さんの・・・」
「私達、結婚するんです」
「へぇー・・・夏目さんの仕事のコトについて何か教えて頂きましたか?」
「いえ・・・それは・・・」
彼は唯の刑事ではないと踏んでいるけど、謎めいたまま。
彼は私に知られたくなくて、あの時も自分から別れを切り出した。
彼の全てを知りたいのは山々だけど。
「知りたければ、貴方の携番を教えて下さい。私が教えて差し上げます」
彼は上着のポケットから手帳を取り出し、後ろの方のページを破って、私にペンと一緒に差し出した。