元姫は辛くても笑う
「待って……じゃあ、莉子って言ったら…!」
不安そうな顔をする先輩。
……うん。だと思う。いくら1つ学年が離れてるからと言って知ってないわけないよね。
あの噂を。
族関係の人なら誰もが知っている話。
「……はい。あの話、私の事です。」
「っ……。」
あんな話普通にできる人なんて居ないよね。
普通は……普通ならね。
私だって普通に全然なれない。
これで、平然としているのがおかしいくらい。
「じゃあ、ほんとに………。」
「あの…傷あるのか?」
聞かれて、声に出さずに静かに頷く。
それを見て、先輩達が哀しそうな顔をする。
「それじゃあ失礼します。」
私はなにか言おうとする先輩達を無視して。
きずかないふりをして音楽室から出る。