元姫は辛くても笑う
side 莉子
光希が語る、過去に呆然とする。
同情したい訳じゃ、慰めたいわけじゃない。
ただ、光希も苦しい思いをしてるんだと。
伝わった。
そうだよね……どうして、人は裏切ってしまうんだろう。
大切な人に裏切られる気持ちわからないから?
ただ、傷つけるなんて良くない。
「俺の話は、龍火幹部にしか言ってない。……ずっと、隠していきたかった。」
そんな大事なこと、どうして私なんかに言ってくれたんだろう。
私は何も言ってない、大切な人を作りたくないという言い訳を作って。
秘密しかない私が仲間というか、それは確実にNoだ。
「でも、莉子には知って欲しかった。大事な人だから。」
そう言って、強く抱き締めてくる光希。
自然と目が潤んでくる。
「光希、も辛かったんだね。」
私も光希の頭に手を伸ばす。
辛いよね、苦しいんだ、しんどいんだ。
「莉子………」
泣きそうな弱々しい声で言う。
何もしてないじゃん。
私、
でもどこかでまだ信じているんだ。
「ごめん急に、泣くとか。」
「いいよ。」
少しして離れたかと思うとわたしの膝に寝る。
それに少し可愛いと思う。
「さっきの話の続きなんだけどね、」
うん、と頷いて光希を見る。
先程よりは表情が豊かな感じ。
なんだか、私が認められたよう。
「その後、俺イライラして繁華街に行って暴れまくってた。でも、それを紅雅が止めてくれた。」
「!?」
紅雅という言葉にビクリと反応してしまう。
そんな私を放っておいて話し続ける。
「本当にあの時の事感謝してるんだ。龍火には紅雅に感謝してる奴らがいるんだよ。」
「…………」
だから、紅雅について聞いてきたんだね。
「話してた噂、俺は信じてないんだ。あんなに優しい人がそんなことをする人なわけが無い。」
「……っ」
その言葉が、私にはすごく響いた。
………中には信じてくれる人がいると。