元姫は辛くても笑う

「俺らこれから、もう一度戻りたいと思えるような族にする。」

「うん……だから、待ってて。」


そう言われ……少し戸惑う。
だって、こんなふうに思われていたなんて思わなかったの。
それが、少し嬉しい………。


「しまった!先生に呼ばれてたんだった!」

「は?………妃菜タイミング……。」

「ごめん!紅雅またね。」


うん、といい。
帰っていくのを見る。
出ていったのを見届けると、


「はぁ………」


力が抜けて、へなへなと床に座る。
緊張感が抜ける。


「……怖かった。」


ポツリと1人になった部屋でつぶやく。
すると、


「何が?」


頭をひょっこりと出す人。
!?


「い、いつの間に………」

「何が怖いの?」


座り込んでいる私の近くに来て、首を横にする。
優しいな……心配してくれてるのかな?


「だ、大丈夫………」


光希の話を聞き逃げしてるみたいだけど。
これは、さすがに言えないよ………。


「俺ね、莉子に感謝してる。」

「え?」

「だってね、あんな風に話を聞いてもらったのは初めてだったんだよ。だから、少しでも莉子の役に立ちたいんだ。」

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