恋のルーレット
部屋の照明を暗くしたら、エイジがTシャツを脱いだ。

暗くても腹筋が割れてるのが分かって、これが男の体なんだと、自分とは全く違う体つきにドキドキした。

「ねぇ、俺はいいけど無理してない?」

ベッドに寝ている私にエイジが言った。

「してないよ」

「無理矢理ってのは嫌なんだよ。俺のポリシーに反する」

「いいって言ってるじゃん」

早く一つになりたい。

一つになれば、もっと安心出来ると思うから。

「分かった」

エイジは私をベッドに押し倒すと、優しくキスしてからスカートの中に手を入れた。

恥ずかしくて逃げたい気持ちになったけど、そこはぐっと耐える。

エイジの指が中へ入ってくる。

「痛いっ」

激痛が走った。

「力抜いて」

「痛い、痛い、痛い」

こんなに痛いなんて聞いてない!

私が泣きそうな顔をしてるのをエイジが見て、指を抜いてごろんと横に寝転んで、サイドテーブルに置いてある電気を点けた。


「今日は止めよう」

「え?なんで?」

「とにかく止めよう」

「ダメ、今日がいい」

私はエイジの腕を引っ張る。

「なんで急ぐの?この前は拒否してたのに」

「だって」

一番になりたい。

他の女を触った感触を忘れさせたい。


「急がなくてもいつでもヤれる仲じゃん」

「そういう事じゃないんだよ」

「ん?」

「全部私の記憶に塗り替えたいんだよ。今までのエイジの記憶を」

「すげー独占欲。俺にはするなって言ったのに」

確かにそうだ。あれだけ独占されたくない、自由が欲しいと声高らかに訴えていたのは私だ。

それなのにいつの間にか私の方が独裁者になろうとしている。

この男の記憶までを支配したいと思っている危険な思想の持ち主。

あるところへ行けば完全に牢獄行き確定(?)

これはまずい。

恋はこんなにも人を狂わすのか。


けどーー。


とエイジがぽつりと口を開いた。

「大丈夫。もう全部マリィだから。これ以上ないってくらい」

「そう……?」

「マジで」

ああ、単純。

この一言で私は少し安心して、エイジに抱きついた。

エイジの腕が私の背中に回って、ポンポンって優しく撫でてくれた。

大きなエイジの手に触れられると落ち着く。

「今の俺だけ見てよ」

「ごめんね」

過去よりも今だよね。

「いいよ。悪いのは俺だから」

ぎゅっとエイジに抱きついた。


付き合うって難しい。束縛したりされたり。
バランス良く上手く立ち回れるようになりたいのに、心が言うことを聞かないから。

もっとスマートに恋愛出来ればいいのにな。











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