冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
安西部長からプレゼントされたブレスレットを指でなぞると、『お前なら大丈夫だ』という彼の声が聞こえた気がした。

「……それではですね、今回試験的にカップル限定の宿泊プランを熱海ホテルにて実施し、広報部のほうで実際に視察に行っていただいたんですが、その報告をお願いできますか?」

企画部の女性社員からついにバトンが渡され、「はい」と返事をしてから席を立つ。すると。

――あなたのせいで大赤字になるところだったわ。

――ちゃんと確認したのか? 新人だからってこれは許されないミスだぞ。

一斉に視線が私へと集まると、不安な気持ちを揺さぶるように、過去の嫌な記憶が脳裏を掠めた。

「大倉さん?」

「っ!? あ、はい、すみません」

いつまでも一点を見つめている私を怪訝に思ったのか、女性社員から声をかけられてハッと肩が跳ねる。

こんなことじゃだめ! ちゃんと安西部長の期待に応えなきゃ!

気を取り直して小さく咳払いをすると、私は今回の視察について報告を始めた――。
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