冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
取り急ぎで作った資料にしては順調で、会議室にいる全員が私の話に興味深く耳を傾けていた。東京の一流ホテルから引き抜かれた料理長の作る食事が絶品だったことや、時期的に花火大会なども開催されていたことなどを報告すると、「なるほど」と相槌を打っている社員も見受けられた。

「……というわけで、熱海ホテルでは――」

視察の報告もほぼ終盤。数十分ほど話し終え、締めくくろうとしたときだった。

「ちょっといいかな? この熱海ホテルの通年の宿泊人数や年間を通してのほかのプランはあるのかな? 資料不足でよくわからないのだが……」

私の言葉を遮り、軽く手をあげたのは岡崎専務だった。

熱海ホテルの通年の宿泊人数? 年間を通してのほかのプラン? ちょ、どうして今ここでそんなことを……。

どうしよう、そこまで細かいデータ調べてこなかったよ……。

質問してきたのはあろうことか岡崎専務だった。心の言葉を口に出すわけにはいかない。それに岡崎専務の質問は企画部にも通ずるものでもある。それを敢えて広報部の私にする意図が見えない。

もしかして、ここまで調べていないということをわかっていて粗さがしされているのかも?なんて憶測してしまう。
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