冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
そして週明けの視察当日がやって来た。朝から気合いが入る。

うぅ、重い!

パソコンやら資料やら書類やら、あれこれ持っていくものを準備していたら、ボストンバッグでは入りきらず結局スーツケースになってしまった。

『はぁ? 電車? 冗談だろ。車で行くぞ』という、人混みが嫌いな安西部長の独断で熱海ホテルまで彼の車で行くことになった。密かに駅弁を楽しみにしていただけに少しがっかりだ。

待ち合わせは新宿西口のロータリー。スーツケースを引きながら到着してキョロキョロと辺りを見回していると、安西部長が運転する白いステーションワゴンが私の前に滑り込んできた。

「おはようございます!」

運転席から降りると、安西部長は無愛想に「おう」と答える。

白のカッターシャツにライトブルーのジーンズというラフで爽やかな私服だ。初めて見るプライベートな姿になぜだか目が奪われた。安西部長は背も高いし体格もよく、なにより長い脚にジーンズがよく似合っていた。

私はというと、今日から夏日になると天気予報が言っていたのを聞いて、淡い黄色のサマーセーターに白のスカートと特別感もなくシンプルな格好だ。

なんか、地味……だったかな?

でも、これから遊びに行くんじゃないしお洒落は必要ないよね。それに相手は安西部長……だし。

自分に言い訳していると、安西部長が私の荷物を見て長いため息をついた。
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