冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「二人とも視察の報告ご苦労さまだったね」

会議室にはもう誰もいないと思っていたけれど、安西部長以外の声がして肩が跳ねる。振り向くと、そこにはにこにこ顔の岡崎専務が立っていた。

「専務、あんまり俺の部下をいじめないでやってくださいよ、あの質問は企画部にしたってよかったでしょうに」

安西部長がムッとした顔で抗議しても、岡崎専務はその不遜な言い草に顔をしかめることもなく、むしろ機嫌はよさそうだ。

「いじめる? 人聞きが悪いじゃないか安西君。それより二人がどれだけ阿吽の呼吸なのかわかってなによりだ。今後が楽しみだよ」

恰幅のいいお腹をプルプル揺らしながら声を立てて笑う岡崎専務に、安西部長との信頼関係を試されていたのだと、そのとき気づいた。

私がもし主任になったとしてこの先、安西部長と二人三脚で仕事を進めていくためにはお互いがお互いを支え合っていく関係じゃなければいけない。

そっか、そのことを岡崎専務は確かめたかったんだ……。

「とにかく、会議に間に合ってよかったです。せっかく視察したのに、それを会議の場で報告できないなんて悔しいですから。それとひとつ報告しなかったことがあるんですけど……」

私が言葉を濁すと、岡崎専務が目を瞬かせた。
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