冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「……すみません。恥ずかしいところをお見せして」

健一と話しているところなんて見られたくなかった。けれど、安西部長は気にすることもなく平然としている。それはそれでなんとなく寂しいんだけど……。

「別に、ほら」

とっくに注ぎ終わったコーヒーを自販機から取り出すと、安西部長からそれを手渡される。

「ありがとうございます……。あの、さっき言ってた先約って?」

安西部長と今夜なにか約束でもしただろうか、記憶を辿るけれど身に覚えはない。すると安西部長は片手で頭をガシガシ掻くと、ほんの少し顔を赤らめた。

「……するんだろ?」

「え?」

「デート。お前がしたいって言ったんだろ? 今夜だ、時間空けとけよ」

それだけ言うと、彼はくるっと背を向けてオフィスへと戻って行った。

安西部長……なにか飲み物買いに来たんじゃないの? 結局なにも買わずに行っちゃった。

もしかして、健一から私を守ってくれたのかな?

なんて都合のいいように考えてしまう。

ッ!? 今、今夜デートって言ってたよね? 時間空けとけって……覚えててくれたんだ。

ムズムズとしたものが沸き起こり全身が火照りだすと、手の熱でカップの中の氷が急速に溶けだしていくのがわかった――。
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