冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
エレベーターの箱がぐんぐん昇っていき、ここが何階なのかわからないまま安西部長の後をついていくと、パノラマ夜景が目前に広がる高そうなレストランバーに到着した。

「たまにひとりでここに来るんだ。誰かを連れてきたのは初めてだな」

綺麗に磨かれた黒い大理石の床に間接照明の灯りが反射している。カウンター席の後ろには様々な銘柄のボトルが行儀よく並び、座り心地のよさそうなソファ席にはお客さんが談笑しながらお酒をたしなんでいた。

落ち着いた雰囲気の店で見るからに大人な感じが漂っていて、こんな場所で安西部長がひとりカウンター席に座って煙草を片手にウィスキーなんか飲んでいたら、きっと絵になるだろうなぁ……なんてことまで想像してしまう。

「お客様、こちらでございます」

ホール内を抜け、恭しく店員に案内されたのはドアを隔てた完全個室だった。革張りのカップルシートに照明が軽く落とされていて、窓の向こうに広がる新宿の夜景が一層煌めいて見えた。

「素敵ですね……」

ほぅ、と感嘆のため息が何度も出てしまうくらいにその場所は私を魅了した。

「そうか、それはよかった。まぁ、座りな」
< 149 / 170 >

この作品をシェア

pagetop