冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
今年の梅雨は長くて毎日ジメジメしていたけれど、ようやく明けたと思ったら一気に真夏日の陽気になった。これから行く熱海というロケーションにぴったりな季節だ。

「梅雨が明けた途端にもう真夏ですね」

「ああ」

「エアコンが効いて少し涼しくなりましたね」

「そうだな」

か、会話が続かない……。

思えば二年間、ずっと安西部長の下で仕事をしていたけれど、こんなに急接近したのは初めてだった。仕事の腕はいいし頭の回転も早い尊敬できる上司かと思いや、私の頭を撫でくり回して子ども扱いしてきたり、ぶっきらぼうな物言いも苦手だ。

はぁ、先が思いやられるなぁ。

「わっ!」

そう思ったとき、考え事をしていたせいで膝に乗せていたバッグが滑って中身が全部足元にひっくり返ってしまった。

「おいおい、ったく鈍くせぇな」

「す、すみませんっ」

ちょうど信号が赤になり車が停車する。慌てて拾い集めるけれど、財布の中のカード類まで見事にバラバラだ。

もう、なにやってるんだろ、私のドジ!
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