冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
熱海の視察は仕事だから行きます。と彼女はそう言い張っていたが、その表情は戸惑いと困惑が隠しきれていなかった。

この二年間、大倉を傍で見てきたが彼女は芯が強くて負けず嫌いで……そしてついついからかってしまうくらい、可愛い。

柊は彼女を守り切れなかった。だったら、だったら……俺が。

「視察、俺と行くか」

次の瞬間、そう俺は口走っていた。

すると大倉は目をパチパチさせて、俺をじっと見つめた。そしてわずかに表情を曇らせたのを見逃さなかった。

しまった……やっちまったか俺。

おいおい、なんだよその顔は……。ッ!? まさか、こいつ俺のことが苦手だったりするんじゃ……。

フラれた相手と二泊三日の視察に行くくらいなら、俺と行ったほうがマシだって思うだろ? 思うよな?

そうだ、なにかほかに理由づけがないと下心があるなんて誤解されるよな。

部長特権でほかの仕事を柊に回すとして、ちょうど上層部から熱海ホテルの視察確認をして来いと言われていたし……。

一瞬であれこれ考えて取り繕うように大倉に話すと、しばらくの沈黙の後、彼女は俺と視察に行く決意をした――。
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