冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「安西部長? どうしたんですか? ぼーっとしちゃって」

長い長い回想からハッと我に返ると、まだ艶めきを残した瞳で一糸まとわぬ彼女が俺を見つめていた。

「え? ああ、いや、なんでもない。ちょっと色々思い出して感慨に耽っていただけだ」

薄暗い部屋には湿気を含んだ情事の甘い残り香が立ち込めている。そっと隣で寝そべる彼女の頬に触れると、ムズムズとしたこそばゆさに柄にもなくどんな顔をしたらいいのかわからなくなる。

今までガキだのなんだの思っていたくせに、いざ組み敷いてみれば彼女は最高に色っぽい女だった。よがる表情を思い返すだけでまた身体が熱を持ちそうになってしまう。

「あの、私たちのこと……部署のみんなには黙っていたほうがいいですか?」

大倉は甘えるようにそして少し不安げな顔をして、頬にあてがう手に指を絡めてきた。

「柊と付き合っていること、部署の連中には秘密にしとけって言われてたんだろ?」

「え?」

やっぱりか……。

大倉と柊が付き合っていたことは、一切誰も知らなかった。彼女の同僚さえだ。ずる賢いあの男のことだ、どうせ二股をかけていたことがバレたら、都合が悪いという自分本位の思惑があったのだろう。そんなことにも気づかずに彼女は……。
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