冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「へぇ、お前、ゴールドか」

「え? あっ、ちょ、見ないでください!」

運転席まで飛んでいた免許証を安西部長が拾い上げ、まじまじとそれを見ている。

人生の中で数あるうちの汚点。そのひとつが運転免許の更新のとき、二日酔いで顔がパンパンにむくんだまま撮った顔写真だ。これを見る度にいつも凹まされる。

あ~見られちゃった……恥ずかしい!

「別に減るもんじゃないし、このくらいいいだろ。ほら」

それを手渡され、私は慌ててそれを財布の中の奥に突っ込んだ。

「すみません、ありがとうございました」

真っ赤な顔を伏せると、信号が青に変わり何事もなかったかのように車が再び進みだす。

「そんな免許証の顔写真見られたくらいでタコみたいだそ? 案外可愛いとこあるんだな」

そんなふうに茶化されるとますますゆでダコみたいになるのがわかる。まるで私の羞恥心を試されているような気分だ。

嫌なものは嫌なんです!

もう、安西部長ってば黙ってればいい男なのに。

思わずそう口をついて出そうになるのを堪え、気を取り直して私は視察のための資料を目の前に広げた――。
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