冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
東京から熱海までスムーズにいけば約二時間。

『少し遠回りかもしれないが、江ノ島の海でも見ながら行くか』という安西部長の提案で今、私の左手には江ノ島の海がキラキラと輝いて、夏らしい爽やかな景色がどこまでも続いていた。しかし。

き、ぎもぢ悪い……。

せっかく安西部長が気を遣って江ノ島の海が見えるルートで運転してくれているというのに私はというと、予想外の車酔いですっかりグロッキーな状態になっていた。

「どうした? お前……まさか酔ったなんて言うんじゃないだろうな?」

安西部長が鋭い横目でチラリと様子のおかしい私を睨む。

「あの、すみません……そのまさかです」

「ったく、世話の妬けるやつだな。大丈夫か? 下向いてそんなもん見てるからだろ」

「うぅ、面目ないです」

車酔いの原因は安西部長のご指摘通りだ。会話が続かなくて気まずい状況を誤魔化すため、ずっと資料を読んでいたせいだった。

「この先にコンビニがある。時間はまだあるからそこで休憩するか?」

「ほんと、すみません……うぅ」

「俺も喉が渇いたし、後少しだから堪えろ」

こくこくと首だけ上下に動かして、遠くの景色を眺めたりして気持ち悪さを紛らわしていると、しばらくしてコンビニへ到着した。
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