冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
ホテルのレセプションは、ラタン素材のソファや南国風の観葉植物、天井にはシーリングファンが静かに回っていて、アジアンテイストな空間を演出していた。大きな窓の向こうには広々とした海が見渡せる。

そんな素敵なレセプションのカウンターで、私は顔面蒼白になるような事実に直面していた。

「え? 部屋がひとつ?」

「はい。こちらがお部屋のカードキーになります」

渡されたキーを手に、私は笑顔の女性従業員の前で呆然と立ち尽くした。

「あの、ちょっと待ってください。もしかして、私と安西部長、同じ部屋……なんですか?」

恐る恐る一応確認してみると、安西部長は何食わぬ顔で「それがどうかしたのか?」としれっと答えた。

な、なんで!? ふたりで同じ部屋って……どういうことぉ!?

「あの、ほかに部屋、空いてませんか?」

小声で女性従業員に尋ねると、彼女は不思議そうな顔をして首を傾げた。

「カップルプランですので、お部屋は一室のご予約になりますが……生憎、ほかのお部屋は本日満室でして」

そうだった、カップル限定プランは男女一組で部屋は一室……ああ、どうしてこんなことにー!

「おい、なにモタモタしてんだ。行くぞ」
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