冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
多分、この人は同業者だ。そんな相手に身元を明かすようなことをわざわざ自分から言ってしまった。

「まぁ、さすがに彼女と泊まるのに、自分の勤め先が運営してるホテルに連れてくるわけないよな」

クスッと笑われ、なんだか馬鹿にされたみたいだ。初対面なのに不躾にもほどがある。

なによ、この人……。

嫌悪感を露わにしてムッとしていると、男性はジャケットの胸ポケットから名刺を取り出した。そしてササッと裏側にペンを走らせるとそれを私に手渡してきた。

――佐々岡グループ 株式会社佐々岡ホスピタリティマネジメント ホテル部 営業部部長 佐々岡昇(ささおかのぼる)

佐々岡グループって、うちの会社のライバルっていわれてるあの佐々岡グループ!? じゃあ、この人は、もしかして……そこの御曹司ってこと!?

ポカンと口を開けたまま、名刺と目の前に立っている彼に視線を何度も行き来させると、「よろしくね」とキラキラスマイルを向けてきた。

「安西と仕事で来てるって言ってたね。じゃあ、君は安西の部下ってとこかな? どうやら特別な関係ってわけでもなさそうだし……よかったら夜電話して」

裏を見て、と私の手にしている名刺を指さす。ひっくり返して見ると、そこに個人的な連絡先の番号が書かれていた。
< 28 / 170 >

この作品をシェア

pagetop