冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「安西部長っ!」

勢いよく部屋のドアを開けて安西部長の前へ立つと、胸に手をあてがいぜぃぜぃと乱れる呼吸を整える。

「なんだよ、騒々しいな」

私には目もくれず、安西部長は淡々とパソコンに向かって指を滑らせていた。無遠慮に仕事を邪魔されて機嫌を損ねたのか、彼の目が鋭く細められる。

「あの、この人にさっきロビーで会ったんです」

佐々岡さんの名刺を彼の目の前に差し出す。すると安西部長はちらりと視線を向けたかと思うと一瞬目を見開いた。そこでようやくタイピングの手を止めたかと思えば、不機嫌に口をへの字に歪めた。

「安西さんのこと、知ってるみたいでしたけど……あっ」

いきなり私の手元から名刺をひったくると、安西部長は躊躇なくそれをビリビリに細かく破いてゴミ箱へ捨ててしまった。

「こいつになにか言われたか?」

楽観的でたまに私のことをニヤニヤしながらからかってきたりきたりする安西部長が、今まで見たこともないような鋭い顔つきをしていて思わず怯む。

「いえ、特には……Barには誘われましたけど」

そう言うと、彼はハァと深々とため息をついて眉間に皺を寄せた。

「お前、ライバル会社からわざわざ名刺なんかもらうなよ、特にこいつの名前見るだけでもムカつくってのに」

「すみません……」
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