冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「写真に撮ってちゃんとチェックしとけよ? 実際の画像があったほうがPRしやすいからな」

「はい! わっ!」

「っと、大丈夫か?」

あっちもこっちも気になって見回していたら、石畳の切れ目につま先が突っかかって躓きそうになる。

「すみません、ありがとうございます」

安西部長の太い腕が私を咄嗟に支えてくれたおかげで公衆の面前ですっ転ばずにすんだ。ホッと胸を撫で下ろして体勢を整えていると、安西部長が「鈍くさい」と言わんばかりの目で私を見ていた。

「キョロキョロしずぎだって、ちゃんと前見て歩けよ」

「はい……」

怒られているのになぜだか私の鼓動は早鐘のように波打っていた。

わ、私、なにドキドキしてるんだろ……支えてくれただけじゃない。

安西部長に触れられると、今までなんてことはなかったのになんだかソワソワして落ち着かない。支えてくれた彼の逞しい腕が目に焼きついて、それを思い返そうとすると安西部長が思い出したように言った。

「あ、そうだ、確かここの並びにうまいアイスクリームの店があるはず……行ってみたいか?」

「え?」

一体自分はなにを考えようとしていたのだろう、と声をかけられてハッと我に返る。

「はい、是非!」

「まったく、調子のいいやつ」

横目でニコリと微笑まれて再び私の心臓がトクンと小さく鳴ったけれど、私はそれに気づかないふりをした。

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