冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
夕方に差し掛かろうとしている時間にもかかわらず、夏日だったせいかアイスクリームの店の前には長蛇の列ができていた。

「すごい行列ですね」

資料作りに使おうと、スマホで何枚か写真に店の様子を収める。

「ほかの店も見たかったら今のうちに行ってこい。俺はここで並んでるから」

「え、そんな……いいですよ、私も一緒に並びます」

上司を並ばせておいて自分だけ店を回るなんてできないよ……。

「じゃあ、悪いが一服行って来ていいか?」

「わかりました」

そういえば、ホテルに着いてから安西部長、煙草吸ってないな……もしかして同室で過ごすのに煙草臭かったらって、私に気を遣ってくれてるのかな。

安西部長って、よくわからないところがあるよね……だから、もっと知りたくなるっていうか。

そんなふうに思いながら、私は彼の背中を見送った。

熱海のアイスクリームってどんなだろ、ガイドブックにも載ってたし、きっと美味しいんだろうな……ん?

スマホで店のことを検索していると、五歳くらいの小さな女の子が泣きながら通りを歩いてくるのが目に入った。

あの子どうしたのかな、近くに親らしき人もいないし……もしかして迷子とか!?
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