冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
泣きながらキョロキョロしている女の子に、大人は一瞥するだけで誰も声をかけようとしない。

私は見るに見かねて並んでいた列から外れると女の子に歩み寄った。

「どうしたの? パパとママは? はぐれちゃったの?」

「わーん!」

ど、どうしよう……。

声をかけられて安心したのか、それとも怖いのか、女の子はさらに鳴き声をあげた。私の身近にこんな小さな子どもはいない。だから、どう接していいかわからずたじろいでしまう。

「泣かなくていいのよ? 迷子になっちゃったのね?」

「……うん」

女の子はひっくひっくと喉を鳴らし、名前を「香奈ちゃん」と教えてくれた。

「じゃあ、一緒にパパとママを探しに行きましょうか?」

警戒されないように笑顔で言うと、香奈ちゃんは泣き止んで小さく頷いてから私の手をぎゅっと握った。

こんな人だかりだもの、きっと心細かったんだ……ひとりで探すのも大変だよね。きっと怖かったんだろうな。
< 46 / 170 >

この作品をシェア

pagetop