冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「え? えっとね……会社の人」

「カイ、シャ?」

きょとんとしている香奈ちゃんに真面目に説明しようか迷っていると、香奈ちゃんがニコッと笑った。

「もしかしてカレシ?」

「カ、カレシ!?」

会社の意味がわからなくても彼氏の意味はわかるのね……さすが、この年でもおませちゃんだわ……。

私はぎこちない笑みを顔に張り付けたまま、彼氏かどうか返事をせずに香奈ちゃんの親を捜索すべく再び歩き出した。

「パパも一緒にいるの、でも……どこにも、いない」

しばらく探してみたけれど、それらしい人は見つからない。また不安になってしまったのか、香奈ちゃんの表情は暗く、泣きべそになり始めた。

「ふえ……ママ、パパ……うぅ」

ああ~また泣いちゃう! どうしよう~。

「大倉!」

なすすべもなくほとほと困っていると、後ろから聞き覚えのある声がして振り向く。

「安西部長!」

両手にアイスクリームを持った安西部長が走り寄ってきて、私は安堵でへなへなとしゃがみ込みそうになってしまった。

「ったく、いきなりいなくなって……って、この子は?」
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