冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
私がなぜか子どもを連れている状況に理解し兼ねるといった顔をし、安西部長はひっくひっくと泣きべそをかいて俯く香奈ちゃんを見下ろした。

「すみません、列に並んでたらこの子が泣きながら歩いてて……迷子になっちゃったみたいなんです」

すると、彼は香奈ちゃんと目線を合わせるように片膝をついた。

「女がそう簡単に泣き顔見せるもんじゃないぞ?」

「うん……」

ち、ちょっと! 安西部長! こんな小さい子相手になにキザなこと……って、泣き止んだ!

不思議なことに安西部長がそう言うと、香奈ちゃんはぐっと目元を拭って頷いた。

「ほら、これやるからもう泣くなよ?」

アイスクリームをひとつ渡すと、香奈ちゃんの顔がパッと明るくなった。

「ありがとう。もう泣かない。あたし、強いもん!」

「あはは、そうだな」

安西部長は笑って香奈ちゃんの頭に手を載せた。すると、また胸がドキドキとしてなぜだかその笑顔から目が離せなくなる。

「香奈!」

そのとき、私たちの姿を見るなり髪の長い女性が走り寄ってきた。どうやら、この人が香奈ちゃんの母親みたいだ。

「ああ、香奈ったら、探したのよ。すみません、うちの子がご迷惑を……」
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