冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
何度もペコペコと頭を下げてお礼と謝罪をする。母親もずっと心配して探していたのか、目に薄っすら涙を浮かべていた。

「見て、かっこいいおにいちゃんにアイスクリームもらったの」

香奈ちゃんはそんなこともつゆ知らず、ニコッと笑って自慢げにアイスクリームを突き上げた。

「まぁ、すみません。あの、お代を……」

「いえ、いいんです。それより、早く食わないと溶けるぞ?」

安西部長がそう言うと、香奈ちゃんは慌ててペロッとアイスクリームを舐めた。その姿が微笑ましくて、私もホッ胸を撫で下ろした。

「香奈、行くわよ。パパが向こうで待ってるから。本当にありがとうございました」

「おにいちゃん、おねえちゃん、ありがとう。バイバイ」

「ああ、もう迷子になるんじゃないぞ」

手を振りながら歩き出す親子の姿を見送っていると、香奈ちゃんがくるっと振り向いて再び私のところへ駆け戻ってきた。

「どうしたの?」

「おねえちゃん、かっこいいカレシだね」

「へっ!?」

こそっと私だけに囁いたつもりだろうけど、バッチリ安西部長にも聞こえている。その証拠に彼はニヤニヤと口元を歪めていた。
< 50 / 170 >

この作品をシェア

pagetop