冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
か、彼氏……ち、違うってば! 安西部長はそんなんじゃ……。

走り去る香奈ちゃんの後ろ姿に心の中で虚しく弁解する。

「お前、まんざらでもなさそうだな、顔が真っ赤だぞ?」

「き、気のせいですよ! ほら、今日って暑いし? それにかっこいいって言われたからって安西部長こそ自惚れないでくださいよ」

「あのなぁ、あんなガキに言われて浮かれる大人がいるか。まぁ、悪い気はしないけどな。ほら」

ああ、私……またムキになってる。

安西部長から差し出されたアイスクリームを手にし、私は小さく「ありがとうございます」と呟いた。

「わっ、溶けてる!」

「お前がいきなりいなくなるから悪い」

そんなこと言ったって……と言い訳をするよりも、溶けて指にまで伝うアイスクリームを素早く舐めた。

「あ! 美味しい!」

濃厚なミルクの味わいのバニラアイスだ。思わず笑顔になる私を見て安西部長も微笑んでいる。

「すみません、時間を割いてしまって……」

「お前はほっとけない性格だもんな。前も後輩が残業してるの見て手伝ってただろ?」

それって……先週の話? 安西部長、見てたんだ……。

書類作成に間に合わないと嘆いていた後輩を置いて自分だけ帰るわけにもいかず、手伝っていたのを安西部長は陰から見ていた。それを知って、ほわっと胸が熱くなる。

見ていないようで、ちゃんとそういうところ……見てくれてるんだ。
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