冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「あんなのただの遊びのうちだって。でも、君となら本気になれそうな気がするんだ。僕たち出会うべくして出会ったって感じしない?」

「しません」

きっぱりと拒絶の意を表したのに、それでもめげずに佐々岡さんは一歩私に近づいた。同時に私も一歩あとずさる。

「佐々岡さん、視察で来てるって言ってましたよね? 仕事中にこんなことして不誠実です」

――怖い。

いくら虚勢を張っても相手は男性。力づくでねじ伏せられたらきっと太刀打ちできない。佐々岡さんはそんな私をクスクスと笑って、背中に嫌な汗が浮く。

「なにがおかしいんですか?」

「いや、いまどきこんな真面目で素直な子がいるんだなって」

「馬鹿にしてますよね? ッ!?」

すると、佐々岡さんが足を踏み込んで私に詰めよると、自販機が背中とぶつかって息を呑んだ。

「あいつ、うちの会社のノウハウを盗んで東条でも同じように使ってるんだろ?」

「え?」

顔を逸らすことも忘れ、安西部長への敵意むき出しにした佐々岡さんを、私は負けじと至近距離で睨む。本当は怖くて身体が小刻みに震えているのはわかっているけれど、それを悟られないよう私はぐっと下唇をに歯を立てた。

「あんなコソ泥みたいなやつ――」

「やめて!」
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