冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
もう限界だった。今にも無理やりキスをされそうで、私は手を振り上げて思い切り佐々岡さんの頬をビンタした。

「痛ってて……今の強烈」

いい感じにスマッシュが決まったときのような爽快感に胸がスッとなる。佐々岡さんは打たれた頬をさすりながら苦笑いすると私から距離を取った。

言われっぱなしじゃ気が済まない。今度は私が言わせてもらう番!と私はここぞと言わんばかりに大きく息を吸い込んだ。

「安西部長が佐々岡を辞めた理由は確かに聞かせてもらいましたけど、腐った上層部が上にいる会社にノウハウもへったくれもありませんから! 安西部長は安西部長のやり方でうちの会社にいるんです! 十年も前の話をいつまでごちゃごちゃ言ってるんですか? なにも知らないくせに勝手なこと言って、これ以上安西部長を侮辱しないで! これでも私は……私は安西部長を尊敬してるんです!」

一気に言い終わるとぜいぜいと息切れで乱れた呼吸を整える。立て板に水のごとく言葉を並べた私に、佐々岡さんはポカンと呆気に取られていた。

「おいおい、こんな夜に大声出すなよ、迷惑だろ」

不意に聞こえたその声にハッと我に返ると、安西部長が呆れたような顔をして腰に手を当てたまま立っていた。
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