冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

「安西部長……」

思わぬ彼の登場に、佐々岡さんは不愉快そうに舌打ちをした。

「彼女から離れろ、半径五メートル以内に近づくな。下衆が」

「なんだって？」

安西部長と佐々岡さんの間に再び火花が散る。お互いに牽制しあって唸りあって、まるで獣同士の争いみたいだ。

「まったく、いいところだったのに、とんだ邪魔が入ったな」

「全然いいところなんかじゃないし！　適当なこと言わないでください！」

安西部長に妙な誤解をされたくなくてついムキになってしまう。すると、安西部長の腕が伸びてきて、ぐっと力強く引き寄せられた。

「うちの会社の社員を汚れものにしたら、今度こそお前の会社もろとも二度と社会に出られないようにしてやる。それにそっちにはバラされたくない“秘密”がたくさんあるだろ？　どう考えたって、分が悪いのはお前らのほうだ」

「くそ……」

安西部長の勝ち誇った顔に佐々岡さんは悔し気にもう一度舌打ちをして、鋭く一瞥すると尻尾を巻いてその場を去って行った。