冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
水を打ったように辺りに静けさが戻る。

「大丈夫か? なにかされたか?」

「いえ、だいじょ……っ、う」

その声が優しくて、私はホッとしたかと思うと急に涙腺が緩んでしまった。

「とにかく部屋に戻るぞ」

「……は、い」

安西部長はそっと私の手を取り、部屋に着くまでずっと離さず握っていた――。

「大倉……」

「あっ――」

部屋に入った途端、ずっと堪えていたかのように安西部長が私の身体を勢いよくぎゅっと掻き抱いた。

「すまない、お前に嫌な思いをさせちまったな……」

抱きしめながら、背中をさすって私を宥める。

「あ、あの、もう大丈夫です」

いきなり抱きすくめられて困惑する。

「大丈夫なもんか、まだ震えてるだろ。いいから落ち着くまでこうされとけ」

さらに腕に力を込められると、ダイレクトに彼の体温が肌に伝ってきて、私はその温もりに甘えるようにおずおずと背中に腕を回した。
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