冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「私……あんな人に、安西部長のことを侮辱されて……許せなかったんです。佐々岡さんに安西部長のことを悪く言う権利なんかないのに」

再び悔しい思いがこみ上げてきて、じわっと瞳が潤んでくる。私は安西部長の胸にすがるように額を擦りつけた。

「何も知らないくせに言いたい放題言って……どうして間違ったことをしてない人が、辛い思いをしなきゃならないのかって思ったら……私、またビンタしちゃいました」

「ぷっ! あのときの佐々岡の顔、傑作だったな」

頭の上で安西部長が噴き出す。

「え? もしかして見てたんですか?」

「ああ、途中からな」

ゆっくり顔をあげると、目尻からこぼれた涙を親指でそっと拭われた。彼の指がたどった箇所だけがじんと甘い熱を持つ。

「もう泣くな。俺を庇ったつもりだったのか?」

「自分の気持ちが抑えられなくなっただけです」

「ったく、素直じゃないな、それを庇ったっていうんだろ?」

やんわりと目元に笑みを浮かべた安西部長と視線が絡んで、どうしていいかわからなくなる。

自分の気持ちが抑えきれなくなるほど、私はきっと彼に惹かれている。今まで見て見ぬふりをしてきた感情が一気に弾けた気がした。
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