冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「お前があいつにビンタしてなかったら……俺が手を出していたかもしれない。それに嬉しかったんだ、お前が佐々岡に言ってくれたこと。だから、ありがとうな」

安西部長の優しくて心地いい低音が私の聴覚を撫で、そして肌に染みていく。鏡を見なくても頬が紅潮して、きっと目を潤ませていると思う。私の小さく開いた唇から熱い吐息が細く漏れる。

「馬鹿、そんな顔すんな。キスしちまうぞ?」

彼は茶化したつもりだろうけれど……今なら安西部長に唇を奪われても構わない。

「いいですよ。キス……してください」

「え?」

私の返事が意外だったのか、安西部長は目を一瞬見開いて毒を抜かれたような顔になる。

「私、私……安西部長のことが――」

そんなふうに思ったら、溢れんばかりの感情が口からこぼれそうになった。けれど、彼はすっと身を離して私から目を反らした。

「おいおい、手を握って抱きしめるだけじゃ押さえが利かなくなるかもしれないだろ……」

「え?」
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