冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
聞こえるか聞こえないかわからない音量で安西部長がボソッと早口で独り言のように呟く。何を言ったのかもう一度確かめたくて聞き返すと、彼は「なんでもない」と首を振った。

「やめとけ、俺みたいな男。お前は俺の可愛い部下だ、それ以上でもそれ以下でもない」

「安西部長……」

まるで私の気持ちを突き放すような口調に、サッと全身が冷めていくのがわかった。

「それにな、俺の好みは出るとこ出てて黒い下着の似合うエロい女だ」

「わっ!」

いきなりガシガシと頭を乱暴に撫でまわされると、今までの甘くなりかけていた雰囲気が散り散りになって消えていく。

ああ、私……勢い任せになんて馬鹿なこと言っちゃったんだろ。雰囲気に流されて軽い女だって思われたかな……。

それになによ、出るとこ出てて黒い下着の似合うエロい女って……。

私とは似ても似つかない女性のタイプに肩を落として落胆する。けれど、こうやって安西部長が茶化すのは、私への彼なりの気遣いなのだろう。
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