冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
しゅんと俯いていると、私の頭に安西部長の大きな手が載せられる。これはこれで心地いいけど、やっぱり子ども扱いされてるみたいで腑に落ちない。

「腐った上層部か……お前はまっすぐで馬鹿正直だな。けど、そういうところ俺は嫌いじゃない」

「え?」

「俺とお前は少し似ている。汚い物に目を瞑れないところがな。けど、突っ走って危険な目に遭うこともある。だから……」

顔をあげると、吸い込まれるような安西部長の瞳がじっと私を見据えている。今、彼の目に映っているのは私だけ……そう思うとささやかな優越感が湧いた。

「そうならないように、俺がお前を守ってやる」

まっすぐな安西部長の視線を受け、私はひとつ瞬きをした。強い眼差しから言葉以上に伝わってくるのは、彼が本心だけを述べているからだ。

安西部長、ずるいよ……。

真摯な眼差しだからこそ、そんなふうに言われると彼への気持ちが確かなものになっていく。

芽生えてしまったこの感情を持て余し、私はどうすることもできずにただ頷くことしかできなかった――。
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