冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
安西部長は体格もいいし、身長もあるため用意された浴衣の裾から足首が覗いていた。湯上りで湿った髪の毛を掻き上げるその自然な仕草を見ていると、なんだかドキドキしてきて彼に気づかれる前にパッと視線を逸らす。

安西部長から目を逸らすとき、微妙に緊張するようになった気がする。うっかりするとわざとらしくなってしまいそうで、瞳を動かすスピードにまで気を遣ってしまう。

「お前が風呂に行っている間に、さっきダメだししておいた修正箇所を確認しておいたぞ」

「え? そうだったんですか? それで、あの、どうでしたか?」

「短時間で修正したわりにはよくできていた」

安西部長が私の座っている窓際の丸テーブルの向かいに深く腰掛けると向かい合わせになった。すると、浴衣の合わせ目から、均衡のとれたなんとも逞しい胸板が垣間見えて一気に鼓動が暴走した。

「この感じで報告書を進めてくれ、それでもう少し要点を……って、お前なに見てんだ?」

「へっ!? い、いいえ! な、なにも!」

いきなりバチッと目が合ってしまい、私の視線があらぬ方向を見ていたことに気づかれてしまった。慌てふためく私に彼がニヤッと笑う。

「ふぅん、エッチ」

「ばっ、馬鹿なこと言わないでくださいよ!」

弁解するよりも前に腰を浮かせ、前のめりになって丸テーブルに手をつく。

確かに安西部長の胸板見てドキドキしちゃったけど! これは意図的なものじゃなくて……。

すでに真っ赤になった顔じゃ、なんの説得力もない。
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